日々学び、感謝し、成長する

データとハートを活かす人事を目指した成長奮闘記(?)です

フィードバック(Feedback)は人のためならず?:ハーバード・ビジネス・レビューの記事から学ぶ

 

フィードバックとは?

 皆さんの会社では「フィードバック(Feedback)」を頻繁に受けたり提供したりしますか?

 振り返ると、日本企業にいた時はフィードバックという言葉なんて聞いたこともなかったような気がします。外資系の会社に移り、上司・同僚から何か事あるごと(幹部層へのプレゼンテーションの後、メールでのやり取り、他部門との打ち合わせがうまくいかなかったとき)にフィードバックを受けるようになりました。

 フィードバックの8割くらいはどちらかというと「伸ばすべき点」について受けます。そのフィードバックを受けて自分が至らない点に気づくことができたと思います。

 また2割くらいは「良かった点」について教えてくれることがあります。外資系に移った当初、褒められることに慣れていなかった私は、ポジティブなフィードバックを受けると照れ臭いだけだったのですが、「強み」を伸ばしていくことも重要と、どうしたらよりよくできるかを考えました。

 このように私にとってフィードバックはとても貴重で自分を成長させてくれるものです。

 しかし、最新のハーバード・ビジネス・レビュー(2019年3-4月号:英語版です)のトップ記事は「Feedback Fallacy(フィードバックに対しての間違った考え方)」です。雑誌の表紙タイトルは「Why Feedback Fails -Criticizing people doesn't help them excel. There is a better way⁻ (なぜフィードバックは失敗するのか -批判をしても人は成長しない。よりよい方法がある)」です。(よければこちらのリンクから雑誌の表紙のイメージを見てください。ボクシングのパンチングボールが泣いています😥。ちなみにこの最新号はアマゾンではまだ売られていないようでした)

 

 この題に衝撃を受けた私はすぐに読みました。今回はこの記事の内容とそれを読んだ感想についてお伝えしたいと思います。

hbr.org

*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。

フィードバックが役に立たない理由

この記事ではFeedbackが役に立たない理由を3つ挙げています。

  1. 私たちは自分が思うほど他人の仕事ぶりについていい評価者ではない(We aren't the reliable raters of other people's performance that we think we are.)。過去40年様々な研究により抽象的な事柄(ビジネスの専門性、積極性)について客観的な評価基準を持つことができず、評価する人のの価値観や定義にしか基づかない。
  2. 批判を受けると脳の学習能力が妨害される(Criticisum inhibits the brain's ability to learn.)。脳科学的には学ぶ時に使われる脳内の神経系統は人により異なるため、他の人からのアドバイスがその人にとって有効とは限らないということです。また批判されると人は攻撃防御反応(fight or flight system)が作用し、その結果活動領域が狭まる。
  3. 優秀さというものは人により異なり、事前に定義ができないし、失敗の反対でもない。それゆえその人の優秀さというものを上司が訂正することもできない(Excellence is idiosyncratic, cant be defined in advance, and isnt the opposite of failure. Managers can't correct a person's way to excellence.)。筆者はコメディアンの例を取り、笑いの取り方がコメディアンそれぞれで違うように、優秀さもそれぞれ違うということ。また失敗から学ぶことでそれが卓越な仕事ぶりにつながることではないので、その人のできていないところをフィードバックしてもよいパフォーマンスにはつながらない。

 筆者は結論として、私たちが部下や他人の能力を伸ばすためにできるのは①うまくいっている点を述べて自発的な学習を促進するようにすること、②評価はできないのだから自分個人の体験として何がうまくいったかを述べることだといっています。

この記事を読んで

 ご紹介したのは要約ですが、記事では7ページの長文でいろいろな例を持ち上げていかにFeedback(とりわけ相手の課題について)が役に立たないかを述べています。納得できるところがある一方、正直違和感を感じることもありました。

 まず第一の違和感は1点目の抽象的なことを正しく評価できないという点です。確かに公平に評価するというのは難しいことです。一方、周りからの評価が高くない人は周囲の同僚や関係者とうまくいっていない課題があり、そのために仕事がうまくいかないということにつながっていると思われます。

 第二は個々人の学習パターンや優秀者は違うからフィードバックは意味がないという点です。確かに違いがありつつも、他人の経験から学ぶことは多いはずです。実際どんな分野においても真似るというところから学習はスタートすると思います。もちろんそのパターンが近い人がいればラッキーですが、そうでなくても学べることは多いと思います。

 

 要は、フィードバックの受け手が受けたフィードバックを活かすかどうかということ、そしてフィードバックをする側が客観的に評価することが難しいということを理解し、受け手に合うような形でできる限りフィードバックをしてあげればネガティブなフィードバックも役に立つのではないでしょうか

 

 フィードバックをする時も、受ける時も常に謙虚な心を持ち続けたいですね!