Huluがネットフリックスに追いつけない理由:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ
Huluはアメリカの会社だった!
皆さんは動画配信サービスを利用していますか?
私はAmazonプライム会員なのでAmazon Prime ビデオはたまに利用します。あとは、ドラマを見忘れた時1週間以内無料で見られるサービスなども時々。
といっても無料だからたまに見るだけで、有料のサービスは全く使っていません。
そんな私でもHuluという名前は知っていました。日本では日本テレビ系が出資しているので、読売テレビ(注:関西での日本テレビ系列の局名です)の番組をみていると否が応でも出てきます。
GEMパートナーという会社の調査によると、2018年時点で日本ではドコモ系列のdTVに続いて2位、12%くらいのシェアを占めているようです。
ですので「ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)」のWebを見ていて、”Why Isn't Hulu better?(Huluが苦戦しているのはなぜか?)”というタイトルに遭遇したとき、
「ん? Huluって日本の会社じゃないの? え、今苦戦しているの??」
くらいのちょっとした好奇心で読み始めました。
ただ読み始めると、新規事業実施における企業間同志の連携の難しさや既存勢力との摩擦といった問題をうまくとらえていたので今回はこの記事を紹介したいと思います。
*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。
ちなみにHuluという会社はどのように生まれたのでしょうか?
比較的早い段階で既存メディアも動画配信へのビジネス参入が必要だと気づいていたわけですね。これだけの企業が出資するなら、出資参加企業からのコンテンツの提供により競争優位はあるはずなのですが 、現在の状況は・・・
- 全くグローバル展開を行わず、アメリカ以外では日本のみ。
- 世界の動画配信の中でネット回線上の占有率はたったの0.4%(Netflixは27%、Youtubeは22%、アマゾンPrimeは6%) *中国・インド除く
- 主戦場のアメリカではNetflixの占有率はさらに大きく30%を超える。(アマゾンPrimeは11%、国別の情報にHuluなし)
ととてもさみしい結果になっています。
何故Huluはうまくいっていないのか?
筆者はうまくいっていない理由を2つ挙げています。
- Its ownership structure, which discouraged its members from sharing their most valuable content(出資構造の問題:出資者が自分たちの最も価値のあるコンテンツの共有を阻害している)
- The organizational structure of its members, which focused on their traditional model of doing business, rather than on streaming(出資会社の組織構造の問題:ビジネス上既存のやり方に重きを置き、動画配信ビジネスを尊重していない)
まずは出資構造の問題については「ライバル社がコンテンツを共有するプラットフォームにいいコンテンツを提供したいと思いますか?」と投げかけています。コンテンツを作っている現場の人たちにとってライバル社にその利益の3分の2が行くプラットフォームにコンテンツを提供するなら、全く違うところに提供したほうがましだと思うのも道理です。
ただし、この問題は21世紀フォックスをディズニーが買収したことで解決されそうです。このことによりHuluの出資構造はディズニー66%、コムキャスト(2009年NBC買収)30%で解決されるだろうということです。ディズニー色が強くなるんでしょうね~。
もう一つの問題は出資会社の組織上の問題です。動画配信ビジネスを始めても組織が同じであれば、動画配信ビジネスのメリットを感じることは非常に難しいということです。
実際それぞれの出資会社の組織構造はメディア/国内外(映画、ホームエンターテイメント、テレビ、海外)で構成され収益も、そのそれぞれの部門で評価をされていました。こうした収益構造のもとでは、オンライン配信というのは自分たちの収益を目減りさせかねないマイナスの要因としてとらえられても不思議ではありません。実際Huluがグローバルに展開していないのも、海外部門の収益を守るためにされていなかったというのです。
筆者はワーナーメディアを買収したAT&Tが行った組織改革のように、メディアごとではなく、消費者に直接コンテンツを届けることに焦点を当てた組織構造にすることが一つの解決策ではないかといっています。今後動画配信が中心となってくるのが自明となる中でそれに合わせた組織構造にしたほうが適切だからだということです。
この記事を読んで
動画配信ビジネスにはほとんど興味はないといいつつ、ネットフリックスに続き2回目の紹介となりました😅。ブログを書くために周辺データを調べながらこの両者の差を一言でいうと「何も持っていない企業こそ強い」ということなのかもしれません。
誰が見ても、コンテンツという資本における優位はHuluにあったはずです。ただ、出資企業間のプライド争いや出資企業内でのコンテンツビジネスの理解不足によりHuluはネットフリックスに大きく水をあけられました。
また、グローバルへの事業展開の方法などもきちんとした絵を描けていなかったということも大きな要因でしょう。既存事業を脅かす存在が現れた時、参入はするものの、「とりあえず自分たちの資源が生かせるから」とか「新規企業への対抗」という対処療法的・場当たり的な事業参入が多いのではないでしょうか?
日本の家電産業はそのようになりつつありますが、自動車産業は今後どうなっていくのでしょうか?