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データとハートを活かす人事を目指した成長奮闘記(?)です

企業文化の向上でやってはいけないこと:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ

 

欧米企業は企業文化の投資に熱心

皆さんの企業は組織の文化や風土を変えるということに熱心でしょうか?

 

私は欧米の外資系で働いて12年近くたちますが、企業文化の変革や向上が人事の優先事項の一つにいつも上がってきます。特にグローバル企業で多様な人材が集まる中、「この企業で働き続けたい」という源泉はその企業の文化によるところが大きいからです。また変化が激しい時代においては、企業文化がイノベーションを生み出せるかどうかのカギを握っていると(少なくとも欧米企業は)考えています。

 

そのため、近年ではさらにその重要性が高まり、CEOが決算発表会で文化について話している頻度は2016年には2010年よりも7%高くなっています。

 

実際企業文化の向上に企業が使うお金も社員一人あたり年間2,200ドル(232,000円!)。でも30%の人事トップしかその費用に見合った効果が出ていないと回答しています。

 

今回の記事は企業文化について膨大な調査を行った結果、やってはいけない3つの間違いをまとめたHBR(ハーバードビジネススクールレビュー)の記事をご紹介したいと思います。

 

タイトルは”The Wrong Ways to Strengthen Culture(文化を強化するための間違った方法)”です。

hbr.org

*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。

 

この記事となる調査は1)グローバル企業で働く7500人以上の社員と200人近くのHRへのアンケートに加え2)100人のHRリーダーとのインタビューから成り立っています。なかなか壮大な調査ですね。

 

企業文化の醸成でやってはいけない3つのこと

企業文化を望ましい方向に変えるために、やってはいけないことを3つに集約しています。

  • 企業文化を表現するのに簡単な「形容詞」を使わない(Don't use simple adjectives to describe culture.): 企業文化の表現は難しいため、得てして「ありきたりの」形容詞になりがちです。例えば”customers-focused (顧客中心主義の)”、”innovative(革新的な)”、”result-oriented(結果嗜好の)”などなど。これがうまくいかないのは、企業文化の表現と実際が違い、上層部が語る文化は「うわべだけ」な感じにとらえられるためです。そこで、お勧めしているのは目指すべき企業文化をその障害となるものとともに語ることです。例えば”We support a culture of innovation while continuing to seek growth and profits from legacy businesses (私たちは既存ビジネスの成長や利益を追求しながら革新的な文化を支持します”といった感じに。そうすることでリーダーが既存ビジネスに対して労力を割いていても矛盾を感じなくなるということです。

 

  • データのみで企業文化を測らない(Don't measure culture with data alone.):企業文化は見えないものなので社員への調査や離職率などでその効果を測ろうとしますが、その結果を見ても社員は納得しません。なぜならそうした数値は自分たちのフィードバックを適切に表していないと社員が感じるからです。その代わり、社員から自由記述でフィードバックを得、リーダーがそのフィードバックを読んでいるということを明確にすることで、社員はリーダーの企業文化に対する思いより身近に感じることができるということです。

 

  • 企業文化の変革を支持する政策変更をすることを忘れない(Don't forget to alter policies to support cultural change): 例えば協働を促す企業文化(collaborative culture)をうたっていても、実際の評価が個々人のパフォーマンスだけで測定されていたら協働を促すことはできません。顧客中心主義(customer-centric)といいながらも顧客訪問の経費を大幅に削減すれば社員が目指す方向性に疑問を持つのも当然です。一番大事なのはリーダーたちが言っていることを実行し、言ったことにあった政策を行うことなのです。

 

この記事を読んで

個人的な経験・意見になりますが、欧米企業では、売上・利益の追求と同時に「その企業がどうあるべきか」ということが、企業の方向性の決定や社員のやる気の醸成、いい人材の確保にもつながるため、企業文化というものを「変える」「向上」させるということを非常に重要視しています。

 

一方日本企業はどちらかというとそういう概念を作り実行していくというよりは、企業の存続や成長に必要な実利的なことに集中し(日本能率協会がまとめた2018年の経営課題の調査結果もトップが収益性向上、2位が人材育成、3位が売上・シェア拡大ですね。)、目に見えない企業文化をどうするかというところにはあまり重要視していない気がします。むしろ、企業活動の結果としての組織風土についての議論はよくありますが。。

 

この記事にあるように、トップが言行一致していないとどんなにきれいな言葉を並べても社員たちはついていきません。一方トップが繰り返しあるべき姿を伝え、言行一致していると企業はその方向に変わり、ビジネスもいい方向に行きます。この記事でも企業文化と現実のギャップを埋めることで、結果として年間の収益目標に到達するもしくは超える確率が9%上がるといいます。

 

もっと日本企業も企業文化に力を入れたほうがいいかもしれませんね。