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無意識の偏見も変えることができる?:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ

 

目に見える偏見とそうでない偏見

「能力がある人ならだれでもいい」といいながら女性や外国人は採用しない面接官

 

「今は男女平等社会だ」と公言しつつ「男はXX」「女性は〇〇」と発言の端々にそうとは思えない言動をする人

 

このように実際に表面上言っていることととその人が無意識で行っている言動には矛盾があるということはよくあります(自分もそうかもしれません。。)

 

英語では、アンケートなど公の場で意見を求められたときの見解や態度をExplicit(直訳では「明示的」ですが、「目に見える」と訳したほうがわかりやすいでしょう)無意識で自制しようと思っても難しい見解や態度をimplicit(同じく直訳で「暗示的」ですが「無意識」と訳しますね)といいます。

 

ご想像にもれなく、無意識の態度や見解による偏見は目に見えるものよりも難しいと考えられてきました。また過去の調査では、無意識の偏見は一定の取り組を行えばほんの一時的には変えられるけれども長くは続かないというものでした。

 

しかし、今回アメリカで2007年から2016年に行われた目に見える態度及びそうでない態度についてのデータ(400万ものテスト!)を研究したところ、過去10年にわたりある種の偏見は大きく改善したというのです。

 

今回はこの結果を紹介したハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事を紹介したいと思います。

 

タイトルは”How American's Biases Are Changing(or Not) Over Time(アメリカ人の変化は時代によりどう変わっているか(また変わっていないか)”です。

hbr.org

*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。

  

この記事を読んでいるとき、「無意識の態度をどのように測るのだろうか」と思ったのですが、Implicit Association Testという無意識の態度を測るために広く使われているテスト手法があるそうです。その際にはある刺激(言葉や写真など)を分類するときに人がかける時間により、測定するそうです(詳しくはこのページをご覧ください。ざっとしか見ていませんが5つのカテゴリーに分けてかなり綿密なテストのようです)。

どのような偏見が改善され、改善されなかったのか?

では実際に改善された偏見はどのようなものでしょうか?

  • Anti-Gay(ゲイに対する偏見):一番改善が高く2007年から16年で33%も偏見が改善されています。このスピードで行くとアメリカでは2025年から2045年の間にはゲイに対する偏見がなくなる(中立になる)ということです。
  • Race and Skin Tone(人種や肌色に対する偏見):ゲイほどではありませんが、それぞれ17%、15%の改善がみられました。特に2012年度以降の偏見に対する改善は早くなっているということです。

一方で偏見の改善が進んでいないもの、逆に偏見が進んでしまったものがあります。

  • Elderly People and People  with Disabilities(高齢者や障がい者に対する偏見):2007年以降5%以下での進捗しかありません。高齢者や障がい者への偏見に対する改善のスピードは非常に遅く、偏見が中立になるのにはこのままでは150年以上かかるだろうということです。
  • Weight Bias(肥満者に対する偏見):肥満者への無意識の偏見は2004年から2010年の間に40%も上昇しているそうです。目に見える偏見のほうはせいぜい変わっていないことを考えると無意識の偏見の拡大が気になりますね。

 

それにしてもそれぞれの改善度がどうしてこれだけばらつきがあるのでしょうか?筆者は例えばゲイについては、1)見た目ではわからないこと、2)その認知度が急激に広まったこと、3)法的整備が進みメディアも肯定的に伝えていることなどが原因ではないかといっています。

 

一方、偏見が大きくなった肥満者については、健康志向が強まっていることに加え、肥満はその人の生活態度の結果であるという考え方も強く、他の偏見と比べてもより手厳しい態度になっているのではないかということです。

この記事を読んで

この記事の結果が日本でも同じだとは思いませんが、「無意識の偏見も変わることができる」ということはとても大きな希望だと思います。

 

筆者も次のように最後この記事を締めくくっています。

 

We can use this research to prople deliberate thought and consciously enacted policies that will motivabe behavior and attitude change in the direction of what we, as a society, desire for our future. (私たちはこの調査を、入念に考え、意識的に人々が私たちの望ましい将来を作ることができるような行動や態度を促すような施策を導入する起爆剤に利用することができます)。

 

一方で、「ファクトフルネス」の本の感想を書いたときのように自分に都合のいいニュースしか取り入れない「タコつぼ化社会」が進行しています。(残念ながら今のアメリカの大統領がそうですものね。。)多様な価値観や背景を受け入れられる、そういう社会にするためには伝え方にも色々と工夫が必要かもしれません。

 

millebon.hatenablog.com