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MBAのケース スタディにはステレオタイプがいっぱい?:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ

 

ステレオタイプがなぜよくないのか?

 

「私は女性だから数学ができなくても仕方がない」

「XXの国の人ってマナーが悪いよね」

 

日常の会話の中で性別や国籍、職業などなど根拠もなく「イメージ」で話していることはよくあるものです。これがいわゆる「ステレオタイプ化」ですね。

 

多くの発言は悪意があるものではありません。でも、人は使う言葉によりステレオタイプが強化され、それがあるグループに不利をもたらすことがよくあります。「女性は家に入って子育てをするのが一番の幸せだ」というような考え方を持つ人が多くいることで、女性の社会進出がなかなか進まなかったということも言えるでしょう。

 

実際このようなステレオタイプ化はどの国・社会・グループでも起こっています。世界の経営者の卵を育てるMBAの授業で使われているケーススタディーにもかなりステレオタイプに侵されているというのが、今日ご紹介するハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事です。

 

タイトルは”Stereotypes in MBA Case Studies(MBAケーススタディに見られるステレオタイプ)”です。

 hbr.org

 *記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。

 

 この記事では、まずMBAケーススタディにおける女性が主役であるケースの少なさの問題を指摘しています。先行研究での女性の主役は9%、今回筆者が2015年-2017年のスタンフォードMBAのコアカリキュラムで使われた249のケーススタディを調べたところ、女性が主役のケーススタディは16%でした。

 

ちなみに、CEOワールドマガジンというCEO専門のメディアの調査では2018年のアメリカの女性経営者の割合は25.5%(こちらの記事参照)、ただしFortune500社のCEOでいくと何と3%しか女性経営者はいないそうです(Forbes Onlineの記事より)。

 

ただこの記事では女性問題だけでなくどのようなステレオタイプケーススタディに出現し、それに対する対応策を提案していますので「自分のステレオタイプ化」に気づくために必要なことを示唆してくれています。

 

MBAのケースによくあるステレオタイプ

筆者はケーススタディにあるよくあるステレオタイプを4つに分類しています。そのうち2つに日本の例があるのがなかなか興味深いです。

  • 文化についてのありきたりな表現(Sweeping statements about cultures) :ケーススタディではある国の文化について特に前置きやデータ、特別な例もなく一般化して書かれていることがあるというのです。例えばアメリカで成功した日本のレストランは、日本では年功序列制や学歴社会によりこのような速い成長は成し遂げられなかっただろうという事例を紹介しています(詳しくはわかりませんが、飲食業界でこの記述は少し一般化しすぎかも。。)
  • 消費者の行動についてきちんとした説明がなくステレオタイプを押し付けている(Lacking context and reinforcing stereotypes about consumer behavior): 前例が文化であったのに対し今度は消費者に対するステレオタイプ化ですね。記事ではEDの薬に関するケースで、ED経験者のパートナーが女性しか登場せず、同性愛者にはEDの薬が必要ないという見方をしているのではないかと述べています。
  • 性別についてのステレオタイプや男性・女性の役割を押し付ける(Pr omoting gender stereotypes and reinforcing gender roles) : 女性のCEOについての「素晴らしい母親だ」、「業界を率いるトップと話しているとは思わないだろう」というような表現は女性CEOだからこそ使う表現で、女性はこうあるべきだという思い込みからきているものだといいます。ここでも日本のお弁当屋さんが「一番いいのはお母さんのお弁当なのですが」といった表現を紹介し、ケースの作者は「(わざわざお母さんというのではなく)家の料理が一番いい」といえばいいのではないかと批判しています(間違いなく取材したお弁当屋さんはお母さんといったのでしょうが。。)。
  • ステレオタイプマーケティングのセグメントを混同する(Conflating stereotypes and marketing segmentation) : この問題は企業自身がマーケティングで消費者をステレオタイプ化してセグメントするため、ケーススタディでのステレオタイプの取り扱いを避けるのが難しいということです。筆者は学生のステレオタイプ化を防ぐためには、ステレオタイプ化されたセグメントをそのまま述べるのではなく、ステレオタイプ化から得たビジネスの学びを一般化して書くべきだと主張しています。

自分の無意識の「ステレオタイプ化」を疑う

こうしたステレオタイプにあふれているケーススタディに対し、筆者は教師はその事実を認めたうえで生徒たちにもその気づきを与えることが重要だといっています。

 

その方法として提案しているのが3つあります。

この提案には、MBAの先生や生徒に限らず私たちが文章を読んだり書いたりするにあたって必要なエッセンスが積み込まれているような気がします。まずは意識しなければステレオタイプ化に気づかないので意識をすること、そして自分で文章を書くときには状況説明に変更すること(その際お弁当屋さんのように性別や年代、国籍などで勝手な偏りがないかをチェックする必要がありますね)。

 

明日から新聞を読むときにはステレオタイプに気を付けます!