不景気には投資にメリハリをつけることが重要:ハーバードビジネスレビューから学ぶ
はじめに
現在日本経済は好景気でも不景気でもない停滞状態ですが、世界経済の状況によりいつ不景気が来てもおかしくはありません。
実際既に10年以上がたった「リーマンショック」は突然のようにやってきたのですから。
2007年から2009年におこったリーマンショックは特にアメリカ経済・企業に大きな打撃を与えました。
その時企業がどのように投資戦略を変えたか、それによってその後の業績にどのような影響を与えたかの結果をまとめた記事がハーバードビジネスレビュー(HBR)にありましたのでご紹介をしたいと思います。
記事のタイトルは”Save or Invest? How Companies Should Navigate Recessions(節約もしくは投資?)企業はどのように不景気を乗り切ったか”です。
*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。
この記事では、アメリカの上場している企業670社(スタンダードプアーズの公式データ+筆者の持っているCSRのデータ)を対象とした分析結果を掲載しています。もちろん、日本とアメリカ企業では状況が違うのですが今後来るべき景気の下降局面に備えて参考になる記事だと思います。
不景気に投資すべき分野・削減すべき分野
分析結果の概要は以下の通りです。
- 他方、労働力(Workforce)やCAPEX(資本的経費)を維持した企業の経営は効率化されていなかった。
- また、研究開発とCSRに投資しながら労働力やCAPEXを削減した企業は、労働力やCAPEXを維持した企業に比べて危機的状況を脱した段階で高いパフォーマンスを見せていた。
よってこの研究による結論は、
不景気にさらなるイノベーションや効率性をもたらすR&Dやステークホルダーとの良好な関係を維持するCSRには投資をすべきだが、労働力や資本については抑制すべきだ
ということになります。
ただし、この分析により筆者は業界によってかなり違いがあることを強調しています。研究開発やCSRが重要視されない業界では研究開発とCSRへの投資がその後のパフォーマンスに影響しないからです。
この記事を読んで
おそらく日本人ならこの結果を見て「不景気に人の投資に重点を置かない方がいい」というのは少しショックに思われるのではないでしょうか?
私も実際そうでしたし、日本で同じ内容の調査をした場合、同じ結果になるかというのは不透明だと思います。特に労働力の削減=リストラとなれば大企業であればCSR上大きな影響を受けるのではないでしょうか?
一方、この結果では不景気時に取捨選択をすることの重要性を示唆していますし、労働力よりも会社として生き残るために何に重点を置くべきかについての学びも与えてくれていると思います。
景気の波があるのは自然のこと。その中で企業だけでなく働く人たちもどう乗り切るかを考えておかないといけませんね。
自分に対する投資も普段から必要だということです!
記事から学ぶ役に立つビジネス英語
- Divest(処分・分割する):名詞では”divestiture”で事業分割のことをいいます。これだけM&Aが活発な中、この言葉は頻繁に使われる言葉ですね。
- across industries (業界間で):事業部、国など分類をまたがってみる場合には”across"を使います。この記事では”We observe considerable differences across industries. (業界間でかなりの違いが観察された)”と使われています。
- takeaway(覚えておくべき重要な点・結論):'takeaway'はお持ち帰りができる料理やお持ち帰りということを指しますが、そこから(持ち帰って)覚えておくべき重要な点、結論という意味を持ちます。例えば研修などに参加した後に”What is your takeaway?(あなたが(この研修で)一番学んだことは何ですか?)”などと聞かれることがあるので、”My takeaway is..(私が一番学んだことは。。)と答えるといいでしょう。