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データとハートを活かす人事を目指した成長奮闘記(?)です

身体本来の機能を尊重することの大事さ:「サピエンス異変」を読んで

 

座りっぱなしは何故体に悪いのか?

 

最近、座りっぱなしはよくなく、少なくとも1時間に1回は立つとか、オフィスでも立ちながら仕事ができる机などが出ています。

 

何故座りっぱなしがよくないのか、運動不足がよくないかなどを人類史の観点から説明した「サピエンス異変ーー新たな時代「人新世」の衝撃」をこの度読みました。

サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃

サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃

 

この本を手に取った理由は「近代の急速な生活の変化と、いわゆる動物としての「ヒト」の進化のスピードの矛盾で何が起こっているのか」ということを知りたかったからです。

 

自分が生きている間の中でもいろいろなことは激的に変化しています。まず大きいのはネット社会ですよね。自分が子供のころには世界中の情報がどこでも入手できる、誰とでもいつでもつながれるなんて考えられませんでした。それにより、人とのコミュニケーションの方法も電話や口頭からメール・メッセージとずいぶん変わったものです。

 

あとは、地球温暖化(特に今の猛暑では「昔はこんなんではなかった~」と思っちゃいますよね😥)や飽食化・コンビニエンス化なども大きな変化かなと感じています。

 

一方、ヒトとして私たちはそのスピードの変化について言っているのでしょうか?おそらく「NO」だと思います。

 

1つの事例として挙げられるのが「脳の扁桃体」でしょう。ハーバードビジネスレビューの記事でも、組織心理学を理解するうえで脳の構造についての説明がよく出てくるのですが、元グーグル社員がマインドフルネスについて書いた「Search Inside Yourself(サーチ・インサイド・ユアセルフ」の中でこのような文章が出てきます(英語で読んだので原文とともに紹介させていただきますね)。

 

When your amygdala detects what looks like a threat to your survival,  it puts you in a fight-flight-freeze mode and impars your rational thnking (あなたの扁桃体が自分の生存を脅かすような危険を察知したとき、あなたは闘争・逃避・フリーズ状態となり合理的な考えができなくなるのです)

サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

 

 実際近代の生活では自分の生存に関わる危険を感じるようなことはめったにないのですが、例えば誰かに怒鳴られたり、いじめられたり、そうでなくても自分にとって不快な状況に陥ったりすると脳の原始的な部分が作用するのです。

 

要するに、脳が人間の狩猟生活時の危機的状況を忘れられず過剰反応をしてしまうということですよね。

 

では身体の動きと文明の急速な変化はどのようにつながっているのでしょうか?

 

現代人の私たちに何ができる?

この本のメッセージはとてもシンプルで以下のように集約できるかと思います。

「人間の何百万年の歴史の中の大半を人間はサバンナの草原を放浪して過ごしてきた。そんな人間が、この数十年でのオフィスワークが主流になり、歩く量が極端に少なくなり、座っている時間が長くなった結果、いろいろな身体の異常や病気をもたらしている。もっと歩かないといけないし、座っていてはいけない。」

ということです。

 

現代病の一例としては腰痛・肥満・花粉症などが挙げられていますが、筆者は特に腰痛にページを割いて話しています(自身が腰痛で悩まされているからだと思いますが。。)

 

が、ページを割いている割には具体的な解決策はなく(これは見つかっていないからだと思いますが。。)、「腰痛を防ぐ一番の方法は、運動によって、動きや不可に耐えられる身体をつくることだ」と幾分短絡(?)な提案で終わっています。

 

 この本の読み応えは、筆者のとてもシンプルな提案以上に、2足歩行がもたらしてくれたメリットや文明の変化が動物としての「ヒト」の機能にどのように影響を与えたのかというところです。

 

特に2足歩行によってヒトが受けたメリットというのが「①手が移動の仕事から解放されたことで高度な能力を有することになったこと、②太陽光にさらされる面積が少なくなったことで、熱を逃すのが上手くなり、他の動物を上回るスタミナを持つことができたこと(長距離にわたって獲物を追いかけられるということで速さは重要でないということです)」などは興味深かったです。特に②なんてなかなか直感的には思い浮かばないですもんね。

 

文明の変化の大きな転換期として産業革命の前に「農業革命による住民の定住」を筆者は上げています。数千年前に始まった農業革命により食べるものが変化し(炭水化物の増加)、それに伴いが進化したこと。また家畜によりマラリア感染症などが増えたことなど、時には絵もまじえて詳しく説明してくれています。

 

快適さよりも動物としての「ヒト」の機能を重視することの必要性

この本を読んで思ったのは

「快適を望むのは人間の本能であるとともに、自然からは反しているのだな~」

ということ。

 

私たちは人類の祖先まで行かずともほんの100年前の人と比べても非常に豊かな生活をしています。その豊かな生活の結果、「動かない」「歩かない」という「楽な」生活を望んで選択しているはずなのにそれにより苦しめられているところがあるというのは少し皮肉だなと思います。

 

この本の最後のほうにマルティン・ハイデガー

「人間が世界を見た時に、自分は世界の一部であるという考え方でなく、世界を利用しているのだという考えが優勢になっている」という考えを紹介しています。あくまでも自分たちも「動物」の一部であり、ヒトとして持つ機能を尊重しながら謙虚に生きることが必要なのだなと思いました。

 

まずは動き、座る時間を少なくすることから始めましょうかね。