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データとハートを活かす人事を目指した成長奮闘記(?)です

人間は不合理だという前提での経済学:「行動経済学の逆襲」を読んで

 

合理的でないとはわかっていたと思うのですが。。

 

「あなたはいつも合理的な行動・決断をしていますか?」

 

これに対して「はいそうです」と答えらえれる人はどれくらいいるでしょうか?

 

私はどちらかというと感情よりもデータや事実に基づいて考えたり行動する方だとは思いますが、それでもこの答えに「はい」と答えられません。

 

でも、大学時代などに経済学を学んだ人は覚えていると思います。

 

人間的な合理的に判断をし、自分の利益を最大化するために動くのであるという前提でモデルが作られていたことを。。

 

そのとき(といってももう25年以上経ちますが😅)そのモデルについて何ら疑問を持ちませんでした。

 

しかし、最近行動経済学の逆襲(上下)」という本を読んで、旧来の経済学がいかにかたくなに旧来のモデルを維持しようとしていたのか、そして(本来の)人間をモデルに組み込んだ「行動経済学(Behavioral Economics)」が認知されるまでいろいろ紆余曲折があったことを知ることができました。

 

 

 

著者であるリチャード・セイラ―は行動経済学のパイオニアで2017年にノーベル経済学賞を受賞したとても権威のある方です。

 

本の内容は旧来の経済学者(実名も出てきますが)の頑固さに対する批判もありますが、行動経済学のエッセンスが平易に書かれており「行動経済学」というものを知りたい人にもおすすめです。 

 

また研究結果の事例から人間の意思決定に関しての「クセ」についてもいろいろ書かれているので、いい意思決定をしたい、他人といいコミュニケーションをしたいというヒントも多く見つかります(この点の要素は「ナッジ」を含めビジネス誌などで最近よく取り上げられていますね。)

 

人間をモデルに組み込むアプローチ=行動経済学

行動経済学とは一言でいうと「心理学をはじめとした優れた社会科学の知見を取り入れ、現実の人間の行動モデルを取り入れた経済学」ということができると思います。

 

旧来の経済学では人間の合理性、意志力、自己利益には限界がないとされてきました。

 

でも実際はそうではなりません。合理的判断を行おうにもその意思決定に費やせる時間や思考力には限りがあります。なので、合理的に判断するよりも経験則に従ったりするのです。

 

 

行動経済学における基本3原則を筆者は以下の通り3つまとめています。

  1. 観察する:人間がこうあるべきというのではなく、人間のありのままを観察すること
  2. データを集める行動経済学の結果はストーリーで語られることが多いのですが、それがその1つの例だけに当てはまるのか、普遍的に適用されるものかを見分けるためにはデータを集め、それをきちんと記録すること。筆者はマーク・トウェインの以下のような言葉を紹介しています。「知らないことがもの大なのではない、知りもしないことを知っていると思いこむことが問題なのだ」
  3. 主張する:一瞬意外に思える原則なのですが、観察に基づいた学問である以上その仮説が間違っていた、それを修正することが必要になることがあります。そういう場合にきちんと間違いを主張するということが重要だというのです。これは、行動経済学を学問として認知する際に経済学の合理的な人間モデルについて、従来の経済学者との確執を経た筆者が、行動経済学の中でも侵してはいけない過ちだという戒めも入っているのかもしれません。

 

コロナ禍でも役に立つ行動経済学

この本や行動経済学に触れた記事や本から得た知識は人がなぜそのように行動するのか、望ましい行動を行うにはどうすればいいのかについて多くの示唆を与えてくれます。

 

例えば以下のような原則。コロナ禍の状況に当てはめてみました。

  • 条件付き協力者(他の人が協力的であるなら自分も協力する。協力率が低いとタダ乗りに転じる):日本が4~5月の緊急事態宣言で外出を抑えられたのはこのおかげではないでしょうか?みんなが自粛する中、外出すると非難される、周りも店を閉めているから(休業要請がなくても)店を閉めるなど。。

 

  • 人は不公正な申し出を嫌い、そうした申し出に対して金銭的な損害を与えて罰を与えようとする。:申し出を行動に変えると緊急自粛宣言中にオープンしていた店への嫌がらせ電話やポスターなどはその掲示などはこれにあたるといえるのではないでしょうか?

 

  • 人は仮説を支持する証拠だけを探し、反証する証拠を探さない傾向がある:コロナは新型で分かっていないことだらけですが、ある主張だけを取り上げて何がコロナに効く、効かないを取り上げる雑誌の記事など。

 

  • 誰かに何かをさせるようにしたいなら簡単にできるようにする例えば特別給付金一つをとっても郵送じゃないと受け付けない(マイナカードによる電子申請は破綻しているようですし。。)本人確認・金融機関の通帳コピーの添付など簡単とはいいがたい状況です。企業相手の持続化給付金はさらに複雑だと聞いています。それによって政府の対応も遅れる=>給付金の支給も遅れると悪循環を起こしていますね。

 

この本では筆者が政府と連携した例も出ていますが、もっと日本政府も活用していってほしいですね。日本でも一部そのような動きがあるというニュースを見たことがありますが、このコロナのドタバタでは活用されているようには見えませんが。。