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賃金を上げても利益低下にはつながらない?:ハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事から学ぶ

 

アメリカにも”ワーキングプア”という言葉はあった!

 

令和に入る前に、平成で何が変わったかという特集がメディアでいろいろ取り上げられていましたが、労働市場で言うと「非正規社員」が増えたことが一つの大きな特徴でないかと思います。

 

労働政策研修・研究機構のホームページにまとめられた雇用形態別の統計では、平成元年(1988年)から平成29年(2018年)の30年で、非正規労働者の割合は18%から38%、女性に限ると35%とから56%に上がっています。

 

一時「ワーキングプア(working poor)」という言葉もよく聞かれましたが、カタカナ英語だと思っていたこの言葉、実はアメリカでも使われていました!

 

しかも大きな問題(growing problem)になっているということなのです!

 

この問題に対してリーダーが取り組むべきことを紹介した記事をハーバードビジネスレビュー(HBR)を見つけましたので今回紹介したいと思います。

 

タイトルは"Raising Wage Is the Right Thing to Do, and Doesn't Have to Be Bad Your Bottom Line(賃金を上げることは正しいことであり、利益に悪影響を与えるとは限らない”です。

hbr.org

*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。

 

ちなみにBottom Lineとは損益計算書で下(Bottom)にくるということで、利益を指します。逆にTop Lineとは売上高です。英語の記事やビジネスでよく使われるので覚えておいて損はない単語だと思います。

 

 JPモルガンチェースの社員でさえも毎日の生活費を賄う給与をもらっていなかった。。

アメリカは日本より一層所得格差の激しい国です。この記事によれば、2017年では40%のアメリカ人がギリギリで生活をしており、何か400(44,000円程度)ドルの不意の支出があった場合にはしはらうことができない状況だといいます。

 

この記事では、JPモルガンチェースの社長がある会議で自分の社員の給与の低さを追及されているエピソードが挙げられています。

その社員はシングルマザー(ファザー)で

  • 月額の手取りは2,425ドル
  • ワンルームのアパートに娘と二人暮らし:賃料月:1,600ドル
  • 生活費(食費、保育費等含む):1,400ドル

よって月々567ドル(62,000円程度)の赤字でした。

 

この話を聞いて即座に解決策を答えられなかった社長はあとで会社の最低時給を10.15ドルから12ドル~16ドルに挙げたということです。

 

実際こういう動きは実際JPモルガンチェースだけでなくいくつかのビジネスリーダーも行っているということです。それは①特に大企業の場合自社社員が生活保護に頼らざるを得ないというのは正しいことでないこと、②また賃金の上昇は社員のやる気のアップにつながることから生産性の向上及び離職のリスクを低減するというメリットがあるということもを大きな要因ということです。

 

ただ、金融業界はもともと利益率も高く、この賃上げによる利益への影響は大きくありません。JPモルガンチェースの最低時給のアップで影響はあったのは全社員の7%にとどまります。では小売業のように労働集約型で利益率の低い小売業の場合はどうすればいいのでしょうか?

 

賃金を上げるためには仕事のデザインの工夫が必要!

その答えについて筆者は以下のように述べています

 

The way out of this trap is to design jobs in a way that increases workers’ productivity and enables them to drive sales and lower costs. In short, you make it possible to pay workers more by making them worth more to your business(この罠(社員のモラルの向上とビジネスの収益のバランスをとるということ))から抜け出す方法は、社員の生産性をあげるように仕事をデザインし、売上を増価させコストを削減するようにすることです。つまり社員がビジネスの価値を生み出すようにすることで社員により多く支払うことが可能なのです)。

 

言うは易しですが、実際にどうすればと思いますよね?そこでコストコ(社員の賃金も高くしかも福利厚生もいい)の事例をあげています。

 

1.仕事のモデル:社員の生産性を高く、顧客の便益を生み出せるようなオペレーションデザインにしている。(例:商品数やセールを少なくする、明確な基準の設定、社員に意思決定を任せる)

 

2.以下のような信条を基に現場にリーダーシップを要求している。

  • トップがすべてをデザインすることはできず現場の人間がどうすればいいか一番よく知っている。
  • ほとんどの社員はいい仕事をしたいと思い仕事に誇りを持っている
  • 現場を大切にする。

 

いかがでしょうか?コストコの方針は決して目新しいものではなく日本が得意な 現場主義に近いものだと思います。今人手不足で賃金は上がっていますが、人材をコストではなく資産にするためにはどうすればいいか、工夫がいるかもしれませんね。