「忙しい」と生産性は落ちる?:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ
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忙しいと生産性が落ちるという調査結果の衝撃
会社でもプライベートでも「最近どう?、仕事忙しい?」と聞かれて多くの人が「忙しい」と答えるのではないでしょうか?
実際仕事中はやるべきことはいくらでもあります。今の会社では残業はほとんどありませんが、数年前まで前の会社で働いているときは1日最低でも10時間は働いて、ひどい時は土日も仕事にあてていました。
もし、数年前の私が見たらショックを受けるような忙しさについての研究結果に言及したハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事を見つけたいのでご紹介したいと思います。
タイトルは”Preventing Busyness from Becoming Burnout (多忙により燃え尽き症候群になることを防ぐ)”です。
*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。
記事のメインは、忙しさを是とする企業文化は組織単位で取り組まなければいけないという主張の下、アメリカのNPOでの取り組み事例からのヒントを提供しているのですが、私にはその前段の「忙しさと生産性の関係」と「何故忙しさを是とする風潮になるのかという」点がより興味深かったです。
まず第一の点ですが、仕事が忙しくなると焦点を置く範囲が狭くなるというのが生産性が落ちる大きな要因です。こうした事象を行動研究では”トンネリング”というそうなのですが、目の前にある最も緊急だけれども重要度は低い仕事にしか集中できなくなるということです。
調査研究によると、こうしたトンネリング状況ではと知能指数(IQ)が13も低下する状況になるというのですから生産性が低下するというのは理解ができますよね。
ホワイトカラーの生産性を測る指標がないことが私たちを忙しくさせている?
ではなぜ生産性が悪くてもこのような忙しい働き方をするのでしょうか?
筆者は”Busyness has become the new badge of honor(忙しさが新しい勲章となったからだ)”といいます。
長時間働いている人というのは「仕事に熱心な人」という印象を与えますよね。
工場労働者とは異なり、ホワイトカラーの生産性を効果的に測る指標というのはまだ存在していません。
そのため、忙しく働いているというのは仕事に熱心でリーダーシップ(昇進)の可能性があるというシグナルを周りに与えるものとなっているということなのです。
この記事を読んだとき、日本の状況では「あるある」なのですがアメリカでもそうなのだということで驚きを感じました。
人はわかりやすいものを指標にしてしまう傾向があり、会社組織や社会での評価はそのわかりやすい指標に従ってしまうことになります。
でもそのわかりやすい指標が実際の仕事の生産性を悪くしている、さらに仕事と生活のバランスがうまく取れずストレスになり、ハッピーでないのであれば組織ぐるみで変えていく必要があります。
「忙しさ」から抜け出る組織文化を作るためには?
そのためのいくつかの事例はこの記事と最近出ていた別の記事(How to Defeat Busy Culture(忙しい会社風土をどう克服するか))にありましたので興味深い例をいくつか紹介したいと思います。
事例1:休暇中全く働かなければボーナスを提供する
Full ContactというIT会社は休暇取得中に①仕事のメールを見ない、②働かない、③家にいない確認できた場合、年間で7500USドル(日本円にして約795,000円)のボーナスをもらえるという制度を数年前に取り入れました。
この導入成果はすこぶるよく、休暇から戻った後の社員は仕事に対してより熱心に取り組んでいるということです。
事例2:重要な仕事のために空き時間(Slack)を設定する
人は仕事にかかる時間や労力の予測をすることが得意ではありません。そのため重要な仕事のために空き時間を毎週用意しておき、緊急の仕事が入って片づけられなかった仕事を終えるためにあてるというものです。これは病院の手術室を1部屋緊急用に置いておくことで、手術の数が多くなりスタッフの残業を減らしながら収入も増やすことができたという事例を応用したものだということです。
いかがでしょうか?まずは「長時間労働をする人や忙しそうにしている人が生産性が必ずしも高くないのだ」という認識を組織全体で持つことが必要かもしれませんね。