相手に良く見せようするとかえって失敗する?:ハーバード・ビジネス・レビューの記事から学ぶ
相手に良く思われようとするのはアメリカ人でも同じ?
「人から好かれるような人になる」「相手のことを考える」
これは日本では美徳とされていることですね。実際自己啓発本でも、どうやって相手から好かれるかをテーマにした本が多くありますね。
一方、他国から見ると相手に合わせすぎて自分がないというのが日本人の欠点といわれることも多いですね。
では、海外の人は相手の興味や嗜好、期待値に合わせないのでしょうか?
決してそうではなく、むしろビジネスなどにおいては日本人よりも相手をよく研究したうえで内容や言い方を変えます。
外資系に転職してから経営幹部層にプレゼンする前にによく言われるのは「Audience Analysis(聴衆の分析)」です。
自分がプレゼンする相手の興味はどこにあるのか、どうすれば通じやすいのかをまず考え、相手によりプレゼンの内容や言い方を変えます。
このように相手の興味、ニーズや期待値に合わせるということをを英語では「Catering」というようです。
食事などを運ぶ「ケータリング(Catering)」と同じ言葉なのが面白いですね😉
しかし、Cateringは特に相手を知らない場合あまり効果的ではなくむしろ「ありのまま」の自分を見せた方がいいという記事をハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事で見つけました。
タイトルは"Research:It Pays to Be Yourself(調査結果:素の自分を見せる方が報われる)”です。
*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。
この記事ではまず、66%の人が重要なビジネスでのやり取り(例:つきたい仕事での面接、ビジネスコンテストでのアイデアのプレゼン、重要な交渉)では、Cateringの技術を利用し、71%はそれが効果的だと考えているという調査結果を載せています。
が、その考えは間違っている。。ようです。
「ありのまま」でいる方がパフォーマンスが高いという調査結果
この記事では2つの調査結果を載せています。
- あるビジネスコンテストでの一次選考でのプレゼンの効果:166の起業家の卵に参加をしてもらい、プレゼンの後いくつかの質問に答えてもらう。その結果、審査員に合わせようとした参加者よりもそうでない参加者の方が3倍次のステージに上がる可能性が高かった(ちなみに次のステージへ上がったのは10チームのみです)。
- 379人の社会人を募り、ある仕事への応募に応募すると仮定をして2~3分のビデオを作ってもらうように依頼。その中で以下の3つのグループ(グループ1:面接官に合わせるようにビデオを作る、グループ2:自分の素を出すようビデオを作る、グループ3:何も言われない)でそのビデオを判定。結果、グループ1はグループ2よりも採用される確率が26%高く、グループ3もグループ2より採用される確率が15%高かったというのです。(ちなみにグループ3の人の採用確率はグループ1よりも9%確率が低いということです)
何故相手に合わせようとしないほうがいいのか?
ではなぜ素の自分でいる方が結果がいいのでしょうか?
一つ目は相手に合わせることに集中するとネガティブな感情や認識がでてきてパフォーマンスが落ちるからです。実際2つ目の仕事への応募への結果の参加者にアンケートを取ったところ、面接官に合わせようとビデオを作ったグループ1は他のグループに比べて不安を感じ、かつ戦略的に行動しようという意図があったということなのです。自分自身への集中がそがれることでパフォーマンスが悪くなるということですね。
もう一つは相手への期待値を完全に知りえることはない以上、どれだけ調査をしても伝える側は不安があり聞く側も何となく嘘くささを感じるのではないかということです。
個人的な経験上、事前に相手を知る、考えることは特にプレゼンをする折には重要だと思いますが、あんまり考えすぎても不安が強くなるのでバランスが必要ということなような気もします。
一番いいのは素の自分がベースにありつつ相手に合わせて表現することなのかもしれませんね。