”スピード重視”の企業経営は危険?:ハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事から学ぶ
経営はスピードが大事といわれるけれども。。
変化が激しい時代、経営はスピードが重要だとよく言われます。
一方、行動のスピードを重視して、行動の結果を事前にあまり考えないと、不祥事や倫理的な問題の行動を引き起こすリスクがあるのでは?と思いますよね。
スピード重視と倫理的な行動について組織単位で研究した結果がハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事に掲載されていましたので今日はこの記事を紹介したいと思います。
タイトルは”Research:Organizations That Move Fast Really Do Break Things(調査結果:スピードを重視する組織は本当に事を破壊する” です。
hbr.org
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タイトルから結果はお察しかと思いますが😅、実際にその内容を見ていきましょう。
スピードだけを重視すると問題行動が起きやすい!
今回の調査にあたって、筆者はミッションステートメント(企業の使命・存在意義を書いたものですね)から以下のような2つのグループに分けました。
- Locomotion:とにかく速く動くことを重視
- Assessment:慎重に考えることを重視
評価をする対象としたのは、アメリカのフランチャイズ企業の雇用に対する行動です。
フランチャイズ企業はアメリカでも成長が早いとともに、低所得者の雇用者の割合も多いため雇用に対する差別や非倫理的な行動が起きやすい業態です。
雇用に対してはアメリカでは差別についての規定が明確に規定されています。また、Equal Employment Opportunity Commission(EEOC:雇用機会均等委員会)という組織がその啓もう活動や、違反と訴えられた事例の調査・仲裁を行っています。
EEOCのサイトを見ると毎年70,000件もの訴訟があり、最近はRetaliation(報復)に関する訴訟が多くなっているようですね。(EEOCの訴訟のデータはこちらから)
調査は、フランチャイズ各企業のミッションステートメントと過去10年の雇用差別違反の事例を集めて実施されました。その結果ミッションステートメントでスピードを重視する企業であればあるほどEEOCで雇用差別違反を引き起こす可能性が高いということがわかりました。これは企業の業種や場所に関わらず同じ傾向がみられたというのです。
これだけではミッションステートメントのスピード重視が本当に雇用差別違反という行動を引き起こす原因となっているかどうかがわからないため、オンラインで別の調査も行っています。717人のUS在住の参加者に、ある企業の管理者として勤務するという想定で、その企業のミッションステートメントを読んでもらい、その企業の社員に対する取扱いについての具体的な事例(例:障がい者に顧客対応をさせない、新しいPCスキルを学べないかもしれない高齢の社員を配置転換する)についての判断をしてもらったのです。
そうすると、やはりスピードを重視するミッションステートメントを渡された参加者は違法な判断を行う確率が4倍も高かったという結果が出ました。そして実際なぜそのような決断をしたのかを聞いてみると「スピードを重視するミッションステートメントを読んで倫理的なことを考えるよりもすぐに決断をしないといけないと思った」というのです。
この調査結果より筆者は倫理基準が日々の企業活動に生かされるようまずミッションステートメントからAssessmentも重視したものに変えるべきだと主張しています。
日本ではどうか?
この記事を読んで、アメリカにおけるミッションステートメントの社員の行動に与えるインパクトの大きさを再認識するとともに、「日本ではこうはいかないだろうな」ということでした。
外資系で働いていて、外から日本の会社を見ていても「企業理念はあるけどそれがどこまで浸透しているの??」と思うことが多いからです。
また一例ですが、以下のように私の感覚と同じアンケート結果などが紹介されています。
ただ、この調査結果から学べることは「社員一人一人がきちんと考えて行動することで非倫理的な行動は防げる」ということではないでしょうか。
ミッションステートメントがどうであれ、「早くやらないといけないから」「上司がやれと言われたから」とLocomotion型の行動になってしまっていることがないでしょうか。最近の日本のいろいろな不祥事を見ているとAssessment型になっていくことの必要性を感じることが多々ありますね。。
もちろんまずは自分から始めないと。。ですね!