”賢い”と思わせるためには意見を変えた方がいい?:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ
意見を変えた時に人はあなたをどう見るか?
事実とは反していても、自分の意見を変えない人がいます。
会議や議論の中で「でも事実はこうじゃない?」といっても何故かひかない。
最近では困ったことに政治家で多くなっているような気もします。。
このように、明らかに事実に反していても自分の意見を押し通そうとする人はどのように見られているのでしょうか?
という疑問にいくつかの実験を行った結果をまとめた記事がハーバードビジネスレビュー(HBR)に掲載されていましたので、この記事を紹介したいと思います。
タイトルは”Research:Changing Your Mind Makes You seem Intelligent(調査結果:意見を変えると賢いと思われる)” です。
*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。
このタイトルが示す通り、意見を変えた方が”賢い”と思ってもらえるのです。
筆者は調査対象として、起業コンテスト(Entrepreneurial pith competition)を選びました。起業コンテストでは投資家に自分の起業のアイデアを提示し、それがよければ投資資金を得ることができます。その中で投資家は単にアイデアを聞くだけでなく、そのアイデアについての実現可能性の意見を述べたり質問をしたりします。
調査は実際の起業コンテストと実験環境両方で行いました。その結果は
- 実際の起業コンテストで自分たちのアイデアと矛盾した証拠を突き付けられても、76%の起業家は自分の意見を変えなかった。
- ただし、意見を変えた人の方が決勝に残る確率は変えなかった人の6倍も高く、意見を変えないことは損をしているということになる。
- これの結果は実験環境でも同じであった。
ただし、ここからが重要なのですが
- 実験では、意見を変えた参加者は自信がないよう(lacking confidence)に見られる一方で賢明さ(intelligence)があると受け止められた
そうなんです。意見を変える人の方が賢明に見えるけれども自信がないように見えるというのは面白いですね。
意見を変えないほうがいい場合もある
実は、実験結果で得られたような見方は他の調査研究でも同じ結果が確認されたのです。それは採用候補者を選ぶ実験です。
- 採用者がつくポジションが賢さが重要である場合には、面接で意見を変えた人を採用したいという意見が優勢だった。
- 一方、自信家であることが重要なポジション(例:人前で話す仕事が多い)の場合は、意見を変えた人への優勢が弱められた。
というのです。要するに自信を示すことが重要な場合においては、いくら事実とは違っていても自分の意見を通した方がいいということなんですね。
別の調査では参加者はそのことをわかっているというのです。では、何故自分の意見に固執するのでしょうか?それは人前で意見を変えることへの抵抗が大きいからなのです。実際筆者の最後の実験で人にわからないように事実を述べられたときには意見を変更する確率が高くなったということです。
人の意見を変えさせるためには、相手の面目を保つようこそっと行うことが重要なんですね。今後気を付けます。
記事から学ぶ役に立つビジネス英語
今回の記事には比喩的な表現がいくつかあってとても勉強になりました。こういう表現が使えると「英語に精通している」という印象を与えられるかも??
- Hardheadness(頑固さ):日本語でも「頭が固い」という言い方をしますがまさに同じような言い回しですね。
- Dig one's heels in (自分の意見に固執する):「かかとを埋め込む」ということから周りの意見に流されずに自分の考えに固執するという言い回しになったのでしょうか。"dig in one's heels"でも同様の意味になります。ちなみに"in"をお忘れなく。
- Mute(弱まる): 「ミュートにする」というと電話会議などでこちらの声が聞こえないように音声をシャットダウンすることですが、音調を弱めるという意味もあるようですね。この記事では”The preference was muted in jobs where confidence was valued. (自信を示すことが重要な仕事ではこの嗜好は弱まります)”という形で使われています。