伝わる英語を書くためには:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ
文法が正しい=伝わる文章ではない
日本の英語教育は読み書きに特化していることがよく批判として挙げられます。
では、書くことは得意なのかといわれると特にビジネス上においては「?」だと思います。
10数年前外資系で働き始めた時TOEICのスコアは940点でしたが、当初は「何を言いたいのかわからない」、「こんな文章なら最後まで読んでもらえない」と痛烈に批判されました。
文法的にはあっていても言いたいことがはっきりと書かれていなかったからです。
今でもまだ修行中ですが、文章を明確に書くためのコツをわかりやすくまとめた記事がハーバードビジネスレビュー(HBR)にありましたので今回これを紹介したいと思います。
タイトルは”3 Ways to Make Your Writing Clearer(わかりやすい文章を書く3つの方法)”です。
*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。
この記事は筆者はハーバード大学のWriting Center(論文を書く際のアドバイスやコンサルを行う大学の機関)の部長を務めている方です。
ですので読者の対象はどちらかというとネイティブの人も対象として書かれていると思います。わかりやすい文章を書くのに苦労しているのは万国共通だということです😊。
伝わりやすい英語を書く3つのコツ
筆者が挙げるポイントは3つです。
・前触れを省き、ポイント(要点)から始める(Cut the 'since the dawn of time' opening and get right to the point.)
前触れは原文で”since the dawn of time"といっています。直訳すると「太古の昔から」ということなのですが、ビジネス文章で言うと「従来の」状況や人々の考えをつらつら述べたことをこの一言で述べられるということなんですね。
こういう文書はかえって自分の主張を不明確にするので関係のない背景は極力排除することをすすめています。
・文全体のトピックを記述する文章は描写表現ではなく、自分の主張に直接つながるものにする(Turn those descriptive topic sentences into topic sentences that make claims.)
Topic sentencesとはその分全体で伝えたいトピックを読者に伝えるものです。描写文章(descriptive topic sentences)と主張につながる文章(Claim topic sentences)の違いは例を見ると分かりやすいと思います。
- 描写文章:I met with the client on Thursday. (私は木曜日にクライアントに合いました)
- 主張につながる文章:After meeting with the client on Thursday, I recommend rethinking our pitch. (木曜のクライアントとの面会を踏まえ、PR文を再考することをお勧めします)。
最初の文章だとクライアントにあったことは重要なポイントなのだろうと推測できますが、何故このことが重要なのかがわかりません。一方、2番目の文章については顧客にとの面会が主張したいポイントのきっかけになっていることが明確にわかります。
もし事実の描写だけしたい場合には、その事実のどこに読み手が注意を払うべきかを明確にするといいということです。例えば”My meeting with the client focused primarily on plans for futhre growth. (クライアントの面会は主に今後の成長戦略に関する計画について話し合いました)といえば、読み手は「あ、これは今後の成長戦略に書かれたものなんだな」ということがこの文章を読んで理解することができます。
・読み手に何かをしてもらいたい場合にはそれぞれの文章の主体者をきちんと述べる(Make sure people are doing things in your sentences unless you don't want them to be doing things).
これは日本語でも日本人が一番苦手とするところだと思います。次の文章を見てみましょう。
- All managers should approve and submit expence reports by Friday at noon (すべての上司は金曜日の正午までに経費精算書を承認し提出しなければならない)
- Expense reports should be approved and submitted by Friday noon(経費精算書は金曜日の正午までに承認、提出されなければならない)
言いたいことは一見同じのように見えますが最初の文章ではだれが何をすべきかが明らかであるのに対して2つ目の文章はそうではありません。もちろん経費精算書についてだれが何をすべきかが全員わかっていれば2つ目の文章でも問題はありませんが、そうでないならきちんとしたプロセスがとられない可能性があります。
「受動態を避けるべき」というルールは一般的によく言われているようですが、筆者は逆に「読み手に何かをしてもらいたい」場合にのみこのルールを守ればいいと言っています。時には主体者を明確にしたくない場合もあるでしょうし、「誰が」を述べるのではなく「起こった」事実により集中して伝えたい場合もあると思います。すなわち何を言いたいかにより同じ事実でも書き方を変えるということですね。
だれが読者かを考えて表現を変えよう
この3つのルールはシンプルですが「何を伝えたいか」を推敲する上でも役に立つルールだと思います。筆者は「スペルミスや細かい文章のチェックに最後の5分を費やすなら最初にこの3つの戦略を考えた方がいい」といっています。あまりにひどい文法だと読み手の信頼をなくしますが、そうでないなら細部にこだわらず「相手に伝わる」内容とするために集中した方がいいと思います。
ただし、そこも誰がメインの読者かを考えましょう。私も今の会社で英語の文章を書くときは前よりも丁寧に書くことを心がけています(例えば、Dearを必ずつけるなど)。
特に日本人がメインの読み手の時には日本語の考え方で英語を読んでしまう傾向があるので、少しくどくても前触れを長くしたり文法に注意する方がいいかもしれません。
重要なのは読み手に自分が意図したことをやってもらうことなのですから😁