組織を変えるためには成功談より失敗談?:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ
組織改革の75%は失敗?
世の中の変化のスピードがどんどん速くなっている今、組織もそれに合わせて変化をしていくことは「必須」となっています。
今回の「コロナ」のような事態では、すぐに変化に対応しなければ「命取り」になってしまうことさえあります。
実際変わらないことのリスクはだれもが感じていることだと思うのですが、変化に対してうまく対応できているかというと決してそうではありません。
世界的コンサルティングファームのBCG(ボストンコンサルティングファーム)の調査によると75%の変革努力は期待の結果を達成しなかったというのです!
ではなぜ変革が上手くいかないのかといった点について3つの基本的な前提が間違っているという面白い記事をハーバードビジネスレビュー(HBR)で見つけましたので今回はこれをご紹介したいと思います。
タイトルは、"3Things You're Getting Wrong About Organizational Change (組織変革に対する3つの誤解)”です。
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組織改革に有効だと思われている手法は有効でない?
それでは3つの誤解とはどういうことなのでしょうか
1.成功例を共有する
組織変革に限らず、何かアイデア出しや提案をするときにはよく成功例(Best Practices)を共有しあったりします。しかし、数々の実験によると成功例を共有するよりも失敗例(しくじった例)を共有する方が上手くいくというのです。
実際アイデア出しの前のウォームアップとして成功例を語ってもらうのと失敗例を語ってもらった場合、後者の方が26%も多くアイデアが出て、そのアイデアの範囲も15%広かったそうです。
また別の調査では、他人が自分よりも優れた結果を出しているのを目の前にすると自尊心が脅かされるのに対し、自分の弱さを実体験に基づいて共有したチームはより強いつながりを感じるという結果がでました。
人は相手の強さ・優れたところを見るよりも弱い点を見る方が、その人に対して共感し、そのことがチームワークに影響するのですね。
2.うまくいかなくなってから立て直す
変化を必要と感じながらも、実は変化を起こしたいという人はあまり多くありません。
変化が今すぐに必要でない場合に変化を起こそうとする人の割合は2割未満だそうです。
ではどういうアプローチがいいのか:今から会社の課題を立て直すということです。そのための、アプローチとして会社を倒産させる(Kill Our Company)という演習を多様な背景をもつ社員で行い、どうしたら最も効果的・効率的に会社を倒産させることができるかというアイデア出しをすることをお勧めしています。この演習をして出たアイデアには、会社を倒産させないために今すぐ行わないといけない変革のアイデアが出てくるというのです。
3.自社の資産をコントロールする
会社の強みを考えた時、自社が持っている資産(物的、金銭的、人材。。)をどのように活用するかが重要だとよく言われています。ただ、経営上問題があった時にはとりわけ金銭的な資産が足りないと感じます。
それに対して筆者は資産をコントロールするのではなく企業間同士で共有するという考え方を持つべきだと提唱しています。そうすることで、お金を節約できるだけでなく環境への負荷も少なくなります。そして何より何かがあった時に柔軟に対応できるというのです。
実際ドイツには利用されていない製造施設を容易に使えるようにしたり、オランダでは病院同士の医療機器・器具やスタッフを融通しあう仕組みがあるということです。
この記事を読んで
3つの提唱は組織について述べられたものですがとりわけ2と3については個人にも当てはまるものではないかと思いました。今回のコロナ禍の中で思ったのは、「少し前まで思っていた常識・考え方が突如変わる(変わらされる)ことがある」ということ。そうした中では、いかに状況に柔軟に対応できるかがますます重要になってくると思います。
筆者は最後にこのように述べています
"You have to make 'adaptability' a part of daily life. And this is not a project you do once, like building a forever home. It's much more like a being a child who's growing up all the time: your body and the way your brain works change every year that passes. (適応性を日常生活の一部にしていく必要がある。一生の住処を立てるような一度きりのプロジェクトではなく、常に成長する子供のように、体や脳は月日が経つごとに変わっていくのです)”
さて今日は何を変えることができるでしょうか?