経営管理がしっかりしている会社の給与格差は低い?:ハーバード・ビジネス・レビューの記事から学ぶ
仮説と違った結果に
皆さんの会社の給与制度はどのようなものでしょうか?社内での給与格差は大きいでしょうか?小さいでしょうか?
今回の記事はアメリカの統計局(the U.S census bureau)が行った①経営管理がしっかりと行われている度合いと②給与格差の関連性について調べた中間結果についてのものです。調査対象は全米の製造工場。
結果は筆者の予想に反して、経営管理がしっかりと行われている組織ほど、上位10%と下位10%の給与差が低かったというのです。
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実際、経営管理のスコアが0.7以上の会社の給与の格差が160-170%にとどまっているのに対し、0.5以下ですと180%-200%に広がっています。記事にはその相関性を表すグラフも掲載されており、経営管理のスコアと給与格差が反比例になっているとてもきれいな結果が出ていました。
筆者が驚いた理由は、経営管理がしっかりとしていればするほど、優秀な社員のパフォーマンスが他の社員よりも際立ち、優秀な社員に報いる形で彼らの給与が高くなる、すなわち給与格差は拡大すると考えていたからです。
ちなみに経営管理がしっかりしている(structured management) というのは、以下のような項目の導入・実施がきちんと行われているかということです。これまでの研究結果によりこのような経営管理が行われている会社は業績が高い会社であるということが裏付けられているということなんですね。
- monitoring(ビジネスの業績についてのデータ収集・分析)
- targets(厳しいが達成可能な短期・中期目標の設定)
- incenvites(優秀な社員に高い報酬を支払う、業績の高くない社員に対しては研修、配置転換、解雇などの措置をとる)
まだ、調査は最終段階ではありませんが、こうした予想とは違う理由が出た理由として①経営管理がしっかりしていると余剰利益が出やすく、その余剰利益を給与の低い社員にも分配しているからではないか、②研修や人事管理をきちんと行っているため、給与が低い社員についても効率性が高いのではないか、③非効率な仕事(例:ビル管理、清掃)などを外注しているため給与格差が低くなるのではないかという3つの仮説を上げています。ただ、理由はともかく、多くの経営層にとっては筆者と同様「予想外」の結果だと思われるので、研究内容が明らかになるにつれ製造業における給与体系のトレンドも変わるかもしれませんね。
記事を読んで
この記事を読んだ私の最初の反応は「この結果は製造工場のみで考えると納得がいくけど、ほかの業界や職種ではどうなんだろう?」ということでした。
この調査の対象は記事でも製造工場(Manufacturing Plant)と明記されており、製造工場では上記に挙げたような経営管理が行いやすいと思われます。
対して、ビジネスの流れが速く指数関数的(Exponential)に拡大するネットビジネス(よければ、飛躍的(Exponential)にビジネスを成長させる秘訣:ハーバード・ビジネス・レビューの記事から学ぶ を参考にしてください🙂)R&D(研究開発)やマーケテイングのようにひとつの製品開発やサービスの提供手法が大きく売り上げを変革させる職種でも同様なことが言えるのでしょうか?
ちなみに「ベイン・アンド・カンパニー(アメリカの組織コンサル)」が発刊した「TIME TALENT ENERGY」によると、優秀な人々とその他の人々の差は職業の性質によって異なり、反復的な取引業務ではその差が3~5倍、独創的な発想や専門的スキルであればその差は何桁にもなり、グーグルの幹部によれば最優秀エンジニアの価値は平均的エンジニアの300倍あるということです。
今回の記事の範囲は比較的日本が強みをもっている分野であり、日本の平等的な賃金体系を正当化する結果といえるかもしれません。ただ、今後のネットを中心とした国境なきサービス提供が中心となる中で優秀な人(これを定義するのも難しいでしょうが)にどのように報いるかということは課題かもしれませんね。
記事から学ぶ役に立つ英語
- structured(構造化した):記事ではキーワードである"structured management practices" で使われています。日本語で「構造化した」という役は違和感がありますので「経営管理制度がしっかりとしている」と少し意訳しました。欧米人はコミュニケーションでも(少なくともビジネス)においてはstrucuturedを好むのでよく使われます。もし同僚から "your presentation imaterial s well-structured! (あなたのプレゼン資料はよくまとまっていたよ)”と言われたら誉め言葉なのでポジティブに受け取りましょう!
- ongoing(進行中の):これもよくビジネスで使われる言葉です。まだ議論中で結論が出せないときは”This discussion is still ongoing. Please wait for a while. (まだ議論中なんです。もう少しおまちいただけますか?)”と切り返しましょう。
- subject matter experts(その分野の専門家):このとおりなのでこれ以上の説明は必要ありませんが覚えておくと便利な単語だと思います。