日々学び、感謝し、成長する

データとハートを活かす人事を目指した成長奮闘記(?)です

私たちがAIに管理されたくないことは?:ハーバードビジネスレビューの記事から学ぶ

 

フィリピンでのウーバー体験

 

前の会社の仕事でよくフィリピンに出張に行くことがありましたが、出張に行くたびにブルーになるのが移動手段の確保でした。

 

普通のタクシーは、汚いうえに外国人とみるや否やぼったくろうとする。一方ホテルのタクシーは日本のタクシーの倍以上高いし、出先で呼ぶのが大変。

 

確か2015年ごろからフィリピンの同僚に勧められたのが「ウーバー(Uber)」です。

 

日本のウーバーはタクシー業界との争い上乗車サービスを行っていませんが、フィリピンでは普通の人たちが、いわゆるタクシーのようにサービスを提供していました(地元の友人によると、お金持ちのお抱え運転手で空いた時間を使ってアルバイトをしている例が多いようです)。

 

使い方はいたって簡単

  • 利用者はアプリでサービスを申し込む
  • その申し込みを見て登録した運転手がサービスの提供を申し出る
  • 車の種類、車番を利用者に提供
  • 乗りたい場所で待ち合わせ、目的地まで連れて行ってもらう。
  • 利用後はクレジット決済

私はフィリピンで使える4Gもなかったため友人や同僚に立て替えて利用していましたが、車もきれいだし、運転手も愛想がいいし、タクシーより格段に良かったです(値段も、街中の不快なタクシーと同じくらいでした)。

 

快適な上に、ウーバーの評価が地元の友人によかったのはポイントは「安全」。

 

運転手は常にスマホでの位置サービスをOnにしておかなければならないため、追跡が可能ということ(友人のアプリを通じて乗った時も「何かあったら見ているから大丈夫!」といわれました)。

 

そして利用者からのFeedbackが悪いと運転手にとっては今後のビジネスに響きます。

 

ですので、逆に言うとウーバーの運転手はGPSスマホにより管理された状況にあるということです(しかもAIを駆使して)。

 

このウーバーの運転手が置かれている状況は、今後AIの発展によりあらゆる企業や職種に適用される可能性は大いにあります。私も人事面でのデータ分析に興味を持っていますが、そこで浮かぶ疑問が1つ。

 

 人間はAIに管理される状況をどこまで受け入れるのか?

 

ということです。

 

 ということで今回はウーバーの運転手を通じて人間がAIによる管理の何が課題かを分析した、ハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事を紹介したいと思います。

 

記事のタイトルは"What People Hate About Being Managed by Algorithmes, According to a Study of Uber Drivers (人々がアルゴリズムに管理されたくないことは何か?-ウーバーの運転手による調査より―)"  です。

hbr.org

 *記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。

 

この記事はニューヨークとロンドンのウーバー運転手 による調査をいくつかの側面から実施したものの結果です。

 

調査のベースになっているのが以下のものです。

  • 34人の運転手に対する公式・非公式のインタビュー
  • 1,000以上ものオンラインでのフォーラムへの投稿の分析
  • 2012年12月から2018年9月の間のウーバーに関する記事の分析

 

 

AIに管理されたくないこととその対策

調査結果によると3つの点に対して不満があり、それは他の会社によるAI管理でもおないことが言えるというのです。

 

一つ目が常に監視されていること(Constant Survailance) 。私の経験からも常に車の位置情報がみられていると書きましたが、スピードや乗車の受諾率なども監視されており、どの利用者をどこで拾い、どのルートで行くかも指示されているとのこと(指示に従わなければ利用の禁止など罰則を受けるそうです)。また、利用者からのFeedbackの評価はフラストレーションの大きな源になっていました。

 

二つ目が透明性が低いこと(Little Transparency)。ウーバーから運転手に対する色々な指示や監視はアルゴリズム(AI) に基づいていますが、実際そのAIの背後がどうなっているのかは運転手に知らされていません。ウーバー側はそれは「企業秘密だ」といって開示をしていないようですが、運転手が長時間働くことを誘導するような操作を行っていたことは認めたそうです。

 

三つ目が人間味がないこと(Dehumanization)。ウーバーの運転手は自営業主なので、他の運転手との交流や部下・上司とのやり取りなどがありません。会社に対して不満があってもこれを公式に言う手立てがないのです。ですので、個人的に価格を上げるような操作をしたり(どうするのはわかりませんが。。)、会社の知らないところで組合を作ってソーシャルメディアなどに訴えることをしています。

 

これに対する対策として筆者は、1.情報共有(Share information)、2.(運転手からの)フィードバックを求める(Invite Feedback)、3. 運転者間同士の交流の場を作る(Build in human contact)、4. 信頼関係をつくる(Build trust)の4つの対策をあげています。

 

この記事を読んで

AIの活用が進む中で、あまりにも効率性を追求しすぎると人間はそれに反発するのだなという直感で思うことを証明してくれた記事でした。実際、AIの管理が進む中で人間のやる気と生産性がどのようにかかわってくるのかを調べる調査があればぜひ読んでみたいですね

 

管理者側はできるだけ効率化を推進していきたい衝動に駆られるのですが、「私たちが相手にしているのは人間なんだ」というところをきちんと考えたうえでシステムを導入しないと、ウーバーの運転手のように不満がたまる社員が増大するだけかもしれません。

 

どれだけIT化が進んでも、個々人を尊重する基礎を忘れてはいけないということです!