日々学び、感謝し、成長する

データとハートを活かす人事を目指した成長奮闘記(?)です

私たちは否定的なことを言うリーダーのほうが好き?:ハーバード・ビジネス・レビューの記事から学ぶ

 

はじめに

 

  • 寛大で肯定的に話し、その人の話を聞くと勇気が湧いてくるリーダー
  • 辛辣で否定的に話し、いうことを聞かなければ制裁を与えるリーダー

 

どちらが好きですか?といわれると、おそらく多くの人は前者でないかと思います。が、実際に政治の世界のリーダーを見ているとアメリカ、フィリピン、南米など後者が増えてきているのではないでしょうか?

 

同じような疑問をもった研究者が、表現がポジティブ(肯定的)かネガティブ(否定的)かによってリーダーシップ像が影響するのかを調査した記事がハーバードビジネスレビュー(HBR)に掲載されていたので、これを取り上げたいと思います。

タイトルは、”Why We're Drawn to Leaders Who Emphasize the Negative?(何故私たちは否定的なことを強調するリーダーに惹かれるのか)” です。もうタイトルだけ見たら調査結果は自明なのですけどね😅。。

 

hbr.org

*記事の購読は定期購読者以外は3本まで無料。その後は1記事当たり約9ドル課金されます。

 

否定的な発言とリーダーシップの調査結果

 

調査方法

  • 調査対象者はアメリカの有権者518人
  • 1988~2008年のアメリカ大統領選でのテレビ討論でのスピーチを4対(片方は否定的、もう一方は肯定的)を読んでもらう(もちろん候補者名は匿名)
  • 力強さ(パワフルさ)の評価、どちらが大統領にふさわしいか、どちらに投票するかを評価

具体的なスピーチはこんな感じです

  • 否定的:“It’s been a time, therefore, of illusion and false hopes, and the longer it continues, the more dangerous it becomes.”(1980年アンダーソン大統領(共和党)候補)
  • 肯定的:“…And I ask for your support. Working together, we can do wonderful things for the United States and the Free World”(1988年ブッシュ大統領

結果は、否定的なスピーチをした人のほうがすべての評価項目において肯定的なスピーチをした人よりも評価が高かったというのです。まあ、確かに否定的な人のほうが高圧的な傾向があるのでパワフルだと思うのはまだわかりますが、否定的な言葉の大統領に投票したいというのが、私にとっては大きな衝撃でした。

 

また、こうした結果は大統領選にとどまりません。芸術評論や社会的問題といったいろいろな分野においても否定的な発言をしている人のほうがリーダーにふさわしいと評価するという調査結果が出たというのです。

 

何故否定的な発言をする人に惹かれるのか?

 

その理由は、人間の心理にあるといいます。積極的に批判、否定、反論する人は一匹狼のように強い人と見られ見られ、それがパワーの源になっているというのです。

(以下原文)

I suspect that the cause is rooted in human psychology. In actively criticizing, negating, or refuting another person or entity, naysayers could be perceived as acting independently, according to their own agency — a key determinant of power.

 

 これはなかなか面白い分析だなと思いました。確かに、他人を批判や否定をしない大きな理由の一つは、集団的生活をしている私たちにとってみんなと仲良くやっていくことが重要だということがありますよね。逆に大いに批判をする人はある意味村八分になることを恐れないからできるということもあるので、「強く」見られるのかもしれません。

 

 また、人は否定的なスピーチをすると自分も力強くなったように感じるということです。某アメリカ大統領のスピーチを何時聞いても力は感じますが、個人的には前オバマ大統領の穏やかでかつ美しいスピーチのほうがずっと好きだし、真の強さを感じます。

 

 筆者はこのようなリーダーが顕著になったのはデジタルの時代で、コミュニケーションが間接的になっている影響も大きいのではないかと締めくくっています。「言葉でのコミュニケーションは7%に過ぎない」というメラビアンの法則もありますが、デジタルの時代で情報過多の中、本当に人を判断するために見なければならない部分を見ていないのかもしれませんね。

 

記事から学ぶ役に立つビジネス英語

  • naysaying(いつも否定的なことを言うこと):この記事のキーワードでもありました。否定的なことばかりを言う人はnaysayer
  • disconnect (乖離(する)):この記事では肯定的なことを言うリーダーが人気があるのも関わらず否定的なリーダーが台頭しているという意味で使っていますが、よくオフィスではネット環境につながっていない意味で使います。電話会議などで回線が悪く途中で抜けた後に、”Sorry, I was disconnected!"(ごめんなさい、回線が途切れちゃった)みたいに言うことがあります。
  • encouraging(勇気づけられる、励まされる):これも訳しにくい英語ですが、直訳通り「勇気をもらう」という感じです。何か励ましの言葉をもらった時などに"Thank you for encouraging me!(励ましてくれてありがとう)"とか”That encouraged me a lot!(それでずいぶん励まされたわ!)”などといって感謝の意を伝えます